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12月10日にサイゼリヤが豪ドルクーポンスワップのデリバティブ取引契約を解除し、その損失額を約153億円で確定させた、ということを発表しました。


デリバティブ契約解約に関するお知らせ(平成20年12月10日)
http://www.saizeriya.co.jp/ir_info/jp/pdf_jp/release/release20_12_10.pdf


サイゼリヤ:デリバティブで153億円損失確定

 ファミリーレストラン大手のサイゼリヤは10日、巨額の評価損を出した為替デリバティブ(金融派生商品)について、BNPパリバ証券との契約を解約し、153億円の損失が確定したと発表した。発覚した11月下旬には約140億円の評価損を見込んでいたが、円高が進んだことなどから損失額が膨らんだ。責任を取り、正垣泰彦社長の報酬を12カ月間70%減額するほか、その他の役員12人の報酬も3カ月間10~50%減らす。【小倉祥徳】

毎日新聞 2008年12月11日 東京朝刊

http://mainichi.jp/select/biz/news/20081211ddm008020063000c.html


この取引について少し考えてみたいと思います。まず、クーポンスワップですが、これは例えば次のようなサイトで説明されています。

http://deribatibu.blog.shinobi.jp/Entry/21/
http://www.tr.mufg.jp/houjin/derivatives/coupon.html

別の言い方をすれば、元本交換のない通貨スワップで、例えば、

2年間にわたって、毎月末に、豪ドル5ドルを受け取り、一方で円を500円払う契約

とでも言えるかと思います。

つまり、1豪ドル=100円であれば、1回あたりの受け払いはゼロになります。しかし、もし1豪ドル=50円になってしまったら、1回あたり実質的には250円支払わなければならなくなりますし(損失)、一方で1豪ドル=200円になったら1回あたり実質的には500円受け取ることになります(利益)。

今回のサイゼリヤの取引目的については、以下の記事を読む限りは豪ドルの変動リスクを抑えるため、つまりヘッジが目的であると書かれています。


サイゼリヤ、デリバティブで140億円評価損 円急伸で

2008年11月21日20時18分

 サイゼリヤは21日、08年9~11月期に通貨スワップ契約によるデリバティブ(金融派生商品)取引で評価損が約140億円発生する見込みだと発表した。金融危機で円相場が対豪ドルで急伸したことが響いた。正垣泰彦社長は記者会見で「これほどの豪ドル下落は想定外だった。株主などに申し訳ない」と謝罪した。

 サイゼリヤは豪州の加工工場からハンバーグやミートソースを輸入しているが、取引は豪ドル建てで行っていた。調達する豪ドルの変動リスクを抑える目的で今回のスワップ取引を始めたという。

 契約した取引は2種類あり、一つは豪ドルに対し円が78円(07年10月契約)を、もう一つは69円90銭(08年2月契約)を超えて円高にならない限り、割安に豪ドルを調達できる仕組みだった。だが、金融危機をきっかけに円は急伸。足元では対豪ドルで59円台をつけることもある。

 いまの為替水準が続けば、通期で多額の損失を計上する可能性もあるため、取引の解約を検討しているという。

http://www.asahi.com/business/update/1121/TKY200811210314.html


これだけだとよくわからないので、プレスリリースから取引内容を見てみると、以下のような記載がありました。


デリバティブ評価損発生見込みに関するお知らせ(平成20年11月21日)

① FX参照型豪ドルクーポンスワップ

(見込まれる評価損 71.3 億)想定レート65.00
・ 約定日: 2007 年10 月22 日
・ 約定月末日(2007 年10 月末)仲値=105.83 円/豪ドル(参考)
・ 支払日 : 2008 年12 月1日から2010 年11 月1日まで、毎月1日
・ 豪ドル約定金額 : AUD1,000,000
・ 約定レート : 第一回約定レート 78.00 円/豪ドル
ただし、FXが78.00 円以下の円高になった場合、それ以降の約定レートは以下
の式で計算される。
【前回約定レート】×【78.00/FX】円/豪ドル
下限=78.00 円、上限=600.00 円
・ FX : 各為替参照日の東京時間午後3時のJPY/AUD為替レートの仲値
・ 為替参照日 : 各支払日の5営業日前の営業日


② FX参照型豪ドルクーポンスワップ

(見込まれる評価損 50.2 億)想定レート65.00

・ 約定日 : 2008 年2 月7日
・ 約定月末日(2008 年2 月末)仲値=98.93 円/豪ドル(参考)
・ 支払日 : 2008 年9月1日、2008 年11 月1日、2009 年1月1日、2009 年3月
1日、及び2009 年4月1日以降終了日まで、毎月1日、2011 年3 月1 日まで
・ 豪ドル約定金額 : AUD1,000,000
・ 約定レート:69.90 円/豪ドル
ただし、FXが69.90 円未満の円高になった場合、それ以降の約定レートは以下
の式で計算される。
【前回約定レート】×【69.90/FX】円/豪ドル
下限=69.90 円、上限=500.00 円
・ FX : 各為替参照日の東京時間午後3時のJPY/AUD為替レートの仲値
・ 為替参照日 : 各支払日の3営業日前の営業日

http://www.saizeriya.co.jp/ir_info/jp/pdf_jp/release/release20_11_21.pdf


正直、この書き方だと、よくわかりません。

ぼくが為替のデリバティブのタームをまともに読んだことがないことも一因かとは思いますが、このプレスリリースを作られた方は明らかに慣れていない気がします(もちろん契約相手のBNPパリバから受け取った資料をそのままコピーした可能性もありますが)。

細かいことですが、単位とかが平気で抜け落ちています。ほぼ同じなので①の取引について見てみます。

評価損71.3億 円?豪ドル?(まあ、円であることは自明ですが)

想定レート65.00 円/豪ドル? ですよね。

「豪ドル約定金額」って、どういう量なのでしょうか?想定元本ではないのか?クーポンスワップだったら、円の方も必要なのでは?

「【前回約定レート】×【78.00/FX】円/豪ドル」って、分母分子逆ってことではないのでしょうか?例えば、第2回目の約定レートって、もしFX=70とかだったら、第1回目の約定レートが78.00なので、78.00×78.00/70.00 = 86.91 とかになります。あ、でも、下限、上限なんてのが設定されているので、この式は正しく、単なるクーポンスワップではなく複雑な形になっていたのかもしれません。

これって、一体どんなスワップだったのでしょうか、いまいち全体像がつかめません。契約期間が2年間で評価損が71.3億円なので、ざっくりだと、1ヶ月あたり約3億円の損失ということになります。

約定日月末の為替レートと、想定レートの差が約40円/豪ドルなので、、、とか考えても、「豪ドル約定金額」の数字にはたどりつかないような気がします。

アップフロントで円を払う、豪ドルを受け取るようなタイプなのかな、とかも思いますが、それってクーポンスワップなのでしょうか。


情報のない中でこれ以上推測しても仕方ありませんが、今回のサイゼリヤの取引は必要だったのでしょうか。もし、実際に為替リスクをヘッジする目的で取引を行ったのであれば、そもそもこのデリバティブは解約する必要がないと思います。

というのは、解約してしまえばヘッジ取引がなくなってしまい、為替に対するエクスポージャーをもろに取ることになります。もし、今後、豪ドルが200円/豪ドルにでもなったら、また輸入価格高騰をもろに受けてしまうことになります。本来、ヘッジ取引であるならば、このような将来の価格変動性を避ける目的であるはずですから、あせって解約する必要はなかったと思います(デリバティブだけを見れば損失かもしれませんが、輸入する取引の方では利益が出ているはずです。だからこそのヘッジです)。

ただ、単に為替相場の方向性にかけた取引であったのであれば、解約という選択肢もあるでしょう。ただし、そのような取引であるならば、本来、本業を圧迫するような取引をするべきではなかったと思われます。


今回のサイゼリヤのデリバティブ取引は、取引の詳細が不明なのでなんとも言えませんが、そもそもどんな目的で、どんなビューを持って行ったのか、そのあたりがちょっと不明瞭な気がします。

こちらのブログ吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース サイゼリヤのデリバティブ評価損 140億円でも書かれていますが、はっきりさせて欲しいですね。

感覚的には、スワップで153億円の損失って、一体どれだけの想定元本だったんだ?って感じです。

デリバティブ関連の仕事をされている方であればおそらくほとんどの方がご存知であろう伊藤清先生が亡くなられたそうです。

ご冥福をお祈り致します。


「ウォール街で最も有名な日本人」伊藤清さん死去

2008年11月14日

 確率論の世界的権威で、その理論は金融工学にも応用された数学者、京都大名誉教授の伊藤清(いとう・きよし)さんが、10日午前9時26分、呼吸器不全のため京都市内の病院で死去した。93歳だった。葬儀は近親者のみで行われた。数学関係者有志により12月中にお別れ会が計画されている。

 三重県生まれ。東京帝国大理学部を卒業し、内閣統計局統計官、名古屋大助教授などを経て52年から京大教授。その後、学習院大教授などをつとめた。78年に朝日賞、恩賜賞・日本学士院賞、06年にガウス賞を受賞、今年の文化勲章を受章したばかりだった。

 専門は確率論。顕微鏡で見える水中の微粒子の動きのような不規則な運動は、微分積分という数学の枠組みでは取り扱えなかった。これを可能にする「確率微分方程式」の理論を42年に発表。「伊藤の公式」は数学、理論物理学に大きな影響を与えた。

 同様の不規則な動きは経済活動にもあることから、金融派生商品(デリバティブ)の価格決定など最新の金融工学に応用され「ウォール街で最も有名な日本人」といわれた。伊藤理論を金融工学に応用したロバート・マートンとマイロン・ショールズの両氏は97年のノーベル経済学賞を受賞した。

 06年、数学の応用で社会に大きなインパクトを与えた研究を顕彰するため国際数学連合(IMU)などが創設したガウス賞の第1回受賞者に選ばれ、業績があらためて世界的にクローズアップされた。しかしその前から体調がすぐれず、同年8月にスペインで開かれた表彰式には出席できなかった。

    ◇

 〈高橋陽一郎・京都大数理解析研究所教授の話〉 論文を印刷する紙も不足していた戦前、伊藤さんは偶然の現象を分析する数学を世界で初めてきちんとつくった。日本発の数学が欧米にも広がり、経済に応用されるまで発展したのはあまり例のないことだ。しかし、抽象的な数学が現実に応用されることには「測りきれない問題があるように思えてならない」と指摘していた。金融問題から発した経済危機を気にして「英知を集めないといけない」と言われていた。

http://www.asahi.com/kansai/okuyami/OSK200811140069.html


ということなので、伊藤先生および伊藤の補題に関するWikipediaのリンクを載せておきます。ご興味がある方はご覧ください。

英語版の方が詳しく書かれているようです。


Kiyoshi Itō

伊藤清

Itō calculus

Itō's lemma

伊藤の補題

パリバがアーバンと行っていたスワップ取引に関して、外部検討委員会の調査結果が発表されました。

以前、ちょこっとだけ触れましたが、世の中、やってよいことと、やってはいけないことがあるとすれば、これは後者に属すると思います。

専門家ではないので法的な解釈とかはわかりませんが、感覚的にはあり得ない、とぼくは思います。

投資家から見たら、300億調達したようにしか見えませんから。


以下、ロイターから記事を引用しておきます。


UPDATE4: BNPパリバ、アーバンの資金調達でインサイダー取引に該当の可能性=外部検討委

2008年 11月 12日 00:38 JST

 [東京 12日 ロイター] BNPパリバ証券東京支店が経営破たんしたアーバンコーポレイションの資金調達を引き受けた際の問題について調査していた外部検討委員会(委員長:松尾邦弘・元検事総長)は11日、調査結果を発表した。検討委は、パリバが同社しか知り得ないアーバンに関する重要な事実が存在し、それを開示しないよう働きかけたと推測されることを問題視したほか、スワップ取引はアーバンの株式の投資判断を行う上で「重要な情報」と判断。こうした重要な情報の存在を知りながらアーバン株をヘッジ取引していたパリバの行為は、金融商品取引法が禁じるインサイダー取引に該当する「可能性は否定できない」と指摘した。


 パリバの検討委は当初、11日午後の会見で配布した資料で「当該情報を知りながらヘッジ取引を行っていたBNPパリバ証券東京支店の行為は、インサイダー取引に該当する可能性が高いと考えている」と記していたが、同日深夜「インサイダー取引に該当する可能性は否定できないと考えている」に表現を訂正した。


 <スワップ取引によりアーバンの調達額が変動、投資判断で重要な情報>


 検討委は、スワップ取引の存在によって、アーバンが調達できる資金の額が変動するということにおいて、「アーバンの株式に関する投資判断を行う上で重要な情報であると判断する」と指摘した。

 具体的には、アーバンがパリバとの間で、資金調達と同時にスワップ取引を締結したことから、1)アーバンはCB発行で300億円を調達するものの、いったんパリバに交付され、その返還としてアーバンは資金調達できるにすぎない、2)その返還時期はアーバンの株価に影響されるため不確定なこと、3)その返還金額はアーバンの株価に連動するため、株価が下がった場合は全額が返還されない(アーバンは300億円を調達できない)可能性のあること──などの点が、アーバンの株式投資判断を行う上で、投資家にとって重要な事実だとしている。


 検討委は、最終的にインサイダーに当たるか否かは「該当性を判断する立場にない」と結論づけた。会見で松尾委員長は、パリバにはインサイダーの可能性があるとの判断を下したものの、検討委には検察のような調査権限がなく、社会的制裁を下す場合は、当局の判断に委ねる意向を示した。


 松尾委員長は「われわれは(パリバの行為が)形式的に(インサイダーに)該当すると判断している。しかし、売買は極めて機械的に行われており、インサイダーに当たっても、必ずしもその可能性が高いとは言えないのではないか」と述べた。また、違法性を認定するかなど「社会的制裁を課すかについては、事例の動向や取り締まりをする機関の動きを見る必要があり、(この外部検討)委員会が決めつける言い方をするのは避けたい」とし、最終的な判断は金融当局などに委ねた。


 <スワップの非開示、パリバが働きかけたと十分推測できる>


 アーバンは今回問題となったパリバを引受先とする資金調達に伴い、パリバとの間で締結したスワップ取引を開示しなかったが、これについて検討委は、スワップ契約を非開示にしたのは、パリバが非開示を働きかけたためと十分推測できる、と指摘した。こうした「不適切な開示を働きかけたBNPパリバ東京支店の行為はアーバンへの背信とも言うべく、一般投資家と市場を軽視した極めて不適切な行為で、この点に関する担当幹部や経営幹部の責任は免れない」と報告書に明記し、市場仲介機能を担う証券会社としての責任の重さを指摘した。


 また、パリバに対し、再発防止のための内部管理体制の強化などを提言した。松尾委員長は「パリバでは(取引承認委員会で)コンプライアンス部は出席していたが、重きを置かれていなかった」と、コンプライアンスが機能していなかったことを指摘。内部管理上、問題があったとした。


 パリバは9月、経営破たんしたアーバンの資金調達をめぐって問題が提起されていることを受け、第三者による外部検討委を発させ、資金調達に関する契約や付随する取引、事務執行の状況について調査した。

 委員会のメンバーは、松尾邦弘・元検事総長(松尾邦弘法律事務所弁護士)、小澤徹夫・弁護士(東京富士法律事務所)、中島茂・弁護士(中島経営法律事務所)、舩橋晴雄・元証券取引等監視委員会事務局長(シリウス・インスティテュート代表取締役)、長友英資・元東京証券取引所常務(ENアソシエイツ代表取締役)の5人。


 アーバンの資金調達をめぐっては、いくつかの問題が指摘されていた。

 アーバンは今年7月、パリバを引受先に300億円の新株予約権付社債(CB)を発行したが、同時にパリバとスワップ契約を締結。実際にアーバンが調達できた資金は300億円ではなかったことが破たん後に明らかになり、開示上問題があったとの指摘が上がった。

 また、パリバがこの間にアーバンの株式の売買を行っていたことも「極めて不透明な取引」との指摘が出ていた。

 金融庁は11月7日、アーバンの臨時報告書の虚偽記載で、課徴金150万円の納付命令を決定したと発表。アーバンは虚偽記載の事実を認めた。

 検討委の会見後、BNPパリバ東京支店の安田雄典・日本代表が会見し、経営陣や担当者の処分を「速やかに行う」と述べたが、具体的な内容に関する言及はなかった。会見では処分内容について再三質問が出たが、プライバシーの問題上、処分の対象となる人物や内容は開示しないとの姿勢を繰り返し示した。


記事中の企業の関連情報は、各コードをダブルクリックしてご覧ください。


(ロイターニュース 江本 恵美記者)

© Thomson Reuters 2008 All rights reserved.

http://jp.reuters.com/article/stocksNews/idJPnTK021149620081111

日本のCDSインデックス(株式でいうところの日経平均株価やTOPIXのようなもの)は、iTraxx Japan というものですが、このインデックスをトランシェにきりわけた取引が業者間などを中心に行われています。

日本の場合、0-3%, 3-6%, 6-9%, 9-12%, 12-22%(& 22-100%)といったトランシェに分けられているのですが、基本的にはそれぞれのトランシェごとにスプレッドでプレミアムがクオートされています。ただし、0-3%のトランシェだけは、アップフロントペイメント+スプレッドといった形になっており、スプレッドの部分は、+300bpsで固定されていました。

そして、この固定されていた+300bpsですが、北米のインデックスであるCDXや、欧州のインデックスであるiTraxx Europeでは、いずれも+500bpsでした。つまり、日本のインデックスだけが今まで+300bpsだったのです。

そして、今回これを+500bpsしようということになりました。

ちょっと標準化されてそろった感があります。


次は、トランシェの切り方の方をそろえることにはなりませんかね?

iTraxx JapanとiTraxx Europeでは、上述のように、

0-3%, 3-6%, 6-9%, 9-12%, 12-22%(& 22-100%)

となっているのですが、CDXでは、

0-3%, 3-7%, 7-10%, 10-15%, 15-30%(& 30-100%)

となっています。なんで、こう微妙にずれてるんですかね、、、、


そんなこと言ってたら、インデックスの構成銘柄数も違う(iTraxx EuropeとCDXは125銘柄ですが、iTraxx Japanは50銘柄)ので、こちらも合わせましょう、って話になっちゃいますかね。

でも、日本だけで125銘柄は難しそうだし、、、

まあ、無理にあわせる必要性もないと言えばないのかもしれませんが、なんでこう微妙に違うんですかね。いろいろと歴史的な経緯があるのかもしれませんが。

ちなみに、最近全体的に非常にワイドになってきたこともあって個別銘柄のCDSでアップフロントのクオートが見られていますが、これらは日本の銘柄でも+500bpsで通常はクオートされています。

まあ、OTCなのでやりたい形式でやっているだけなんだとは思うのですが、いろいろな意味で標準化を進める必要があるのかもしれません。Central Counterpartyを設立するのであれば、このような動きは進むかもしれませんね。

こちらのブログを読んでいたら、29日の日経新聞の経済教室およびクレデリの会計基準が取り上げられていました。

この経済教室の記事自体は、また突っ込みどころが多いような気もしますが、とりあえずおいておきます。

どちらかというと、上のブログで取り上げられていた「金融商品会計に関する実務指針」にあらわれるいくつかの言葉の意味がよくわからない、という話を書きたいと思います。

金融商品会計に関する実務指針 138項

「クレジット・デリバティブ及びウェザー・デリバティブのうちデリバティブの特徴を満たし市場価格に基づく価額又は合理的に算定された価額がある場合には当該価額をもって評価する。ただし、クレジット・デフォルト・オプションのうち市場価格に基づく価額がないものについては、債務保証に準じて処理する。」

ここで出てくる「クレジットデフォルトオプション」って、何を意味するのでしょうか。クレジットスワップション(クレジットデフォルトスワップのオプション)のことでしょうか。

WikipediaのCredit Default Optionを見てみると、

In finance, a default option, credit default swaption or credit default option is an option to buy protection (payer option) or sell protection (receiver option) as a credit default swap on a specific reference credit with a specific maturity.

http://en.wikipedia.org/wiki/Credit_default_option

とあるので、やはりクレジットデフォルトオプションは、クレジットデフォルトスワップそのものではなく、クレジットデフォルトスワップのオプション契約(クレジットスワップション)のことであるように見えます。

確かに、クレジットスワップションであれば、(少なくとも日本では)ほとんど流動性はないので、市場価格に基づく価額はないと思われます。

しかし、よくよく「金融商品会計に関する実務指針」を見てみると、次のような記述がありました。


金融商品会計に関する実務指針 226項(一部)

第三者(参照当事者)の倒産、信用格付けのダウングレードなどの信用事由が発生すると、現金の支払いまたは現物の受渡しが行われるものをクレジット・デフォルト・オプションという。


金融商品会計に関する実務指針を見る限りは、クレジット・デフォルト・オプションは、クレジットスワップションではなく、クレジットデフォルトスワップそのものを意味しているように見えます。

このあたり、実務経験の浅いぼくにはよくわからないところなのですが、歴史的にはいろいろ言葉の混乱もあったのでしょうか。

どなたかご存知の方いらっしゃいますか。

言葉の定義は認識が同じでないと、いろいろと混乱の元になるので注意が必要かと思います。


とりあえず、会社で誰かに聞いてみようかと思います。

(25日の日経新聞の記事を受けて、最後に一部追記しました)


金曜日(24日)の日本経済新聞およびそのネット版であるNIKKEI NETに次のような記事が掲載されていました。

日米欧、金融保証商品の清算機関設立 損失処理促す

 日米欧が来年にも相次ぎ、企業倒産などで将来資金が焦げ付いた場合に損失を肩代わりする金融商品の清算機関を設立する見通しになった。日本はアジア市場を視野に入れた機関の設置を検討するほか、米欧も官民で設立に向けた協議を始めた。世界的な信用不安の象徴である損失肩代わり商品の安全性と透明性を高める。企業倒産に伴う損失を早期に見積もり、金融機関の損失処理を加速させる効果を狙う。

 損失肩代わり商品は一般に「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」と呼ばれる。企業が発行する社債などを持つ投資家が、第三者である金融機関などから損失肩代わり商品を買っていると、企業が倒産しても元本が戻ってくる。ここ数年、世界で取引規模が急速に膨らみ、6月末の取引残高(想定元本)は全世界で54兆ドル(約5400兆円)に達し、日本の残高は80兆円程度に上るとみられる。 (07:00)

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20081024AT2C2301K23102008.html


これ、まじめにこんな書き方をしているのでしょうか?それとも、何か裏側に意図があってこんな書き方をしているのでしょうか?例えば、「クレジットデフォルトスワップに関する間違った理解を日本経済新聞の読者の方に植え付けさせて頂こう」、みたいな。

しかも、1面トップですよ。


3面にあるグラフのタイトルは、「損失肩代わり商品(CDS)の市場規模」とあります。損失肩代わり商品だったら、SKSなのでは?TMKみたいに書くのであれば。


7面に書いてある図のタイトルは、

「クレジットデフォルトスワップの取引の流れ」

ではなく、

「損失肩代わり金融商品の取引の流れ」

と書いてあります。

誤解を生むような表現を、大々的に使うのはやめて頂きたいと強く思いました。


このブログを読んで頂いている方は、変な誤解をされてはいないと思いますが、最近のメディアの書き方を見ていると、どうも納得がいきません。よろしければ今までのエントリに目を通して頂ければと思います。

クレジットデフォルトスワップ(CDS)とは?

OTC derivatives は Correlation derivatives

CDSの残高が減少したようです

クレジットデフォルトスワップ(CDS)の決済方法-リーマン・ブラザーズの例

クレジットデフォルトスワップ(CDS)における回収率とは?


ぼくもまだクレジットデリバティブの経験は浅いので、誤解しているところもあるかと思います。ということで、本格的に知りたい方は次の本がおすすめです。

クレジット・デリバティブのすべて 第2版
河合 祐子
4881777424


上で書いたことと矛盾するように思われるかもしれませんが、クレジットデフォルトスワップが損失肩代わり商品であることは間違いではないでしょう。ただ、損失肩代わり商品の一つであって、

「損失肩代わり商品は一般に「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」と呼ばれる。」

わけではないと強く思います(「損失肩代わり商品」の前に、(ここで取り上げられている)という言葉が入ればまだましですが、入っていないと誤解を生む可能性が高いのではないでしょうか)。


そんな言い方をしたら、債券や株式だって損失肩代わり商品ということになるでしょう。特に、債券とクレジットデフォルトスワップ(CDS)には、相違はほとんどないでしょう(細かい点を除けば、Funded か、Unfunded の違いだけで、基本的なコンセプトは同じでしょう)。

例えば、債券の場合、国が発行する場合(国債)、投資家からお金を借りて、5年後とか、10年後の満期にお返しする、という金融商品です。その間、クーポンというものが支払われます。しかし、もしその国がクーポンを払えなかったり、その投資家から借りたお金(元本)を返済することができなかったら、デフォルトです。債券の投資家は、この国による返済リスクを抱える対価として、クーポンをもらうわけです(リスクの高い国は、金利が高くなる傾向にあります)。

つまり、国債の投資家は、ある国の損失を肩代わりしているわけです。

最近では、アルゼンチン、ウクライナ、ロシア、アイスランドなどなど様々な国のデフォルトリスクが強く意識されるようになってきています。つまり、こういった国の国債に投資している投資家は、その国の損失を肩代わりせざるを得ない状況に陥る可能性が高まってきているわけです。


つぎに、民間の事業会社が発行している事業債(社債)について考えてみます。日本企業で言えば、東京電力、NTT、トヨタ自動車、オリックス、ソフトバンクなどなど、様々な企業が、事業を行うために、資金調達を行っており、一部は社債を発行する形で行っています。

別の言い方をすると、一般に企業は金儲けをするために、お金が必要なわけですが、損失が発生すると嫌だから、その損失を肩代わりさせるために、債券を発行して投資家に押し付けようとしているわけです(ただし、損失を肩代わりする順序としては、株式の投資家が先に来ますので、債券の投資家は株式の投資家に比べると守られていることになります)。

さて、あえてここでは、日本経済新聞で使われている表現に近い形で、債券(国債や社債)の説明をしてみましたが、一般的にはこんな書き方をする人はいないでしょう。


もっと言えば、保険商品というのは、まさに損失肩代わり商品の典型ではないでしょうか。交通事故を起こして弁償しなければならない、家庭の稼ぎ手が急死してしまい今後の生活に困ってしまう、家事で家が燃えてしまったら大事な財産がなくなってしまう、などなど、そういった損失を保険会社が肩代わりしてくれるわけですが、そのためには保険料を支払うわけです。

ところが、まじめに保険料を支払っていたとしても、突如その保険会社が破綻してしまうと、その保険契約が突如消滅してしまったり、条件が改悪されてしまったりすることが起こります(これは、まさにCDS(より一般にはOTCデリバティブ)で言うところのカウンターパーティーリスクです!)。


CDSばかりを、損失肩代わり商品呼ばわりするのはやめて頂きたいと思います。


それから、最近は「金融工学」も悪者扱いされている気がします。確かに、金融工学の発達によって証券化の仕組みが生まれ、今回のサブプライムの一因になったことは否めないかと思います。

しかし、旅客機が墜落して数百人の命が失われた場合に、航空学が悪者扱いされるでしょうか?ライト兄弟さえいなければ、その目の前で失われた数百人の命は失われなかった。彼らさえいなければ、なんて発想になるでしょうか。

旅客機の場合、いろいろな原因があるかと思いますが、ある作業点検員が点検を怠ったことだったり(人的ミス)、航空機の構造上の欠陥(設計ミス)、想定を超える気候の変化(外部環境の変化)、などなどがあるかと思います。


今回のサブプライムも同じではないでしょうか。証券化の仕組みが出来上がり、リスクを分配する仕組みが出来上がった。それにより、金融機関の融資審査が甘くなり、不動産を購入できる人が増え、買える人が増えたから、不動産価格が上昇。一方で、投資家は、格付け会社の格付けに頼って証券化商品を購入、格付け会社も証券化商品に格付けを付与することで売り上げを拡大、利益を優先するあまり、格付け審査の質が低下してしまっていた。

さらに実体経済の方も、所有している不動産価格が上昇することで、担保価値が上昇、その担保枠を使って、実際に車を買ったり、別の家を買ったり、と消費にまわっていた(資産効果)。これによって、実体経済も潤っていた。

これは、簡単に書きすぎているかもしれませんが、アメリカを中心に、世界の経済がそんな感じでまわっていたのではないでしょうか。歴史的にもバブルは幾度となく繰り返されており、それらの原因は、ある特定の資産や仕組み、というよりは、やはり人間の利益に対するあくなき欲求なのではないかと思います。

だからこそ、そういった人間の欲求発のバブルをできるだけ防ぐために、仕組みが必要なのだと思います。人類はこういったバブルを経験しながら、少しずつ前に進んでいるのではないでしょうか。


ちょっと長くなってしまいました。

(以下、追記です)

25日の日経新聞に以下のような記事がありました(いずれも、10月25日付けの日本経済新聞より一部を引用させて頂いております)。

4面のISDAのCEOピッケル氏に対するインタビュー記事では、

--CDSが危機の元凶といわれている。

「それは誤解だ。大手破綻の主因は資金繰りであり、デリバティブは一部絡んだだけだ。CDSはもともとリスク移転の手段。投機に使われているかもしれないが、いろいろな参加者がいるから市場が成り立つ」

とあります。

誰が言い出したのか知りませんが、ぼくも「CDSが危機の元凶」だとは思っていません。


また、5面の東証社長の斉藤氏に対するインタビュー記事では、

--債務不履行に備えた保証金融商品、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が金融危機を深刻化させたとの指摘もあります。

「CDSの最大の問題点は金融機関どうしが相対で取引しており、実態が見えにくいという点だ。それを解決するために今、米欧ではCDSの清算機関を設立して、市場の監督者がリスクを把握しやすくしようという動きがある」


--市場規制のあり方に関する意見は。

「CDSだけでなく金融派生商品(デリバティブ)全般に、取引の様子を見えやすくすべきだ。(後略)」

とあります。

価格が一般の方に見えにくいのは確かだと思います。ただ、業者間では、Markit社CMA(QuoteVision)が価格情報を集計して提供していますし、銘柄によって流動性の違いが起きるのは避けようがないと思います。

例えば、東証一部、東証二部、マザーズでは、流動性がまったく異なるでしょう。いくら上場していたとしても、毎日何度も価格がつく銘柄もあれば、1週間に何度か、といった銘柄まであるでしょう。

ただ、CDS市場と、株式市場の大きな違いは参加者層の厚みです。日本では、CDS市場への直接の参加者は、金融機関がせいぜい20社程度でしょう。一方株式市場は機関投資家から個人投資家まで幅広い参加者がいます。流動性や価格への信頼性が異なるのは間違いありません。

また、斉藤氏がおっしゃられているように、市場の透明性向上という意味では、CDSのみではなく、OTCデリバティブ全般に言えることなのではないかと思います。

ただ、個人的に思うのは、CDSと他のデリバティブでは一つ大きな違いがあると思います。それは、CDSがデジタル的なペイオフを持っている一方で、金利、エクイティなどのデリバティブはどちらかというとアナログ的なペイオフを持っているので、市場の変化によってじわじわと損益が発生するということです。

なので、時価評価(MtM)を行っていれば、金利やエクイティではそれほどサプライズは起きないと思いますが、CDSの場合はスプレッドが800bpsのところから突然デフォルトするようなこともあるので、突如損失が発生した、みたいに捉えられる傾向にあるのではないかと思います(もちろん、株価でもそれなりに高いところから突然デフォルトが起きて、取引不能になることはありますが、一般的には、なんとなく市場は織り込んでいくと思います。一方、CDSの方は参加者が少ないため、その織り込み方が十分ではない場合が多い気もします(他にも、クレジットイベントの定義が明確ではない、などいろいろ議論すべき点はあるかと思いますが))。


ちょこっと追記するつもりが、また長くなってしまいました。

最近、円が強すぎです。

今までユーロ、ポンド、豪ドル、ニュージーランドドルといった通貨に対して(他通貨に対してもだと思いますが、ぼくはあまり見ていないので)、円が強かったですが、最近は米ドルに対しても円高になっています。

すでに1米ドル97円台。ユーロなんか125円台。

ダウも下げてるし、オーバーナイトでさらに円高も進んでいるので、今日も日経は大きく下げるんですかね、、、

ということは、iTraxxもさらなるワイドニングでしょうか、、、

原油も66ドル台まで下落しているようで、直近の高値と比べるとずいぶん下がってきました。

この流れ、一体いつまで続くのでしょうか。

ブラックサーズデー当時並みに株価が下落するのだとすれば、まだ数年は株価の下落が続くことになるわけですが、、、はたしてどうなることやら。


ここからは個人的な話ですが、金融資産のやられっぷりはひどいです。ポンドなんて、現在158円台。昨年イギリスにいたときに、1ポンド250円くらいだった頃と比べると、イギリス生活が安くなっているんでしょうね。それでも、割高かもしれませんが。日本生活の方が割安だと思います、質を考えると。


一方、実物資産である不動産は、現在の最強通貨(?)であるところの円を毎月きちんと稼いでくれます。不動産市場全体では価格は下落しているわけですが、自分の持っている物件の賃料が契約を継続した状態で下がるリスクは極めて低いでしょうから、こういう時は不動産は強いなぁ、と思います。

退去が発生すればもちろん別ですが。


最後にまた通貨の話に戻りますが、韓国ウォンも安いですね。アジア通貨危機当時の水準まで下落しています。

アジアのソブリン(CDS)もワイドニングしているようです。

最近は、国際的な金融機関に資本が注入され、クレジットイベントなんだか、そうでないんだかよくわからないことになっていますが、ISDAのページによると、前回ちらっと説明した、プロトコル方式によって決済が行われることになっている参照組織は以下の通りです。

  • Kaupþing
  • Landsbanki
  • Glitnir
  • Washington Mutual
  • Lehman Brothers
  • Fannie Mae and Freddie Mac
  • Tembec


Conservatorshipやら、Receivershipやら、クレジットデリバティブの世界はホントによくわかりません。エクイティデリバティブだと、基本的に株価であらゆるペイオフが決まるので、比較的シンプルですね(最近は、Market Disruptionでバリアンススワップの計算に算入されない日もあるらしい、と聞いているので、エクデリの方もすこしやっかいみたいですが)。


さて、今回は、回収率について質問を頂いたので、簡単に書いておこうと思います。


その前に、以下が今までに書いたクレデリ関連のエントリ一覧です。一部専門的なところもありますが、目を通して頂くと、現在、世の中を騒がせ、かなり悪者扱いされている(?)、クレジットデフォルトスワップについて、その一端に触れることができるのではないかと思います。

クレジットデフォルトスワップ(CDS)とは?

OTC derivatives は Correlation derivatives

CDSの残高が減少したようです

クレジットデフォルトスワップ(CDS)の決済方法-リーマン・ブラザーズの例


さて、本日の本題、回収率です。CDSの中に専門用語として出てくる回収率の前に、会社が倒産し、清算した場合の債務(債券やローン)の弁済率(回収率)について簡単に説明します。

企業は、簡単に言うと、デット(他人資本)とエクイティ(自己資本)によって資金調達を行い(お金を集め)、そのお金を使ってビジネスを行って、利益を上げています。デットというのは、銀行からお金を借りたり、債券と呼ばれる有価証券を投資家に買ってもらって、資金調達を行っている部分です。一方、エクイティは、株式と呼ばれる有価証券を投資家に買ってもらって資金調達を行っています。

ビジネスがうまくいけばいいのですが、うまくいかなくなり、会社が倒産してしまうこともあるでしょう。そのような場合、会社が持っている資産(現預金、有価証券、商品などの在庫、不動産など)を現金化して、今までお金を融通してもらっていた人たちに返済します。その際、デットという形で資金提供していた人たちに優先的に返済され、それでも余ったら、エクイティの形で資金提供していた人たちに返済が行われます。

例えば、ある企業が倒産し、清算して資産が十分になかった場合(債務超過)に、100万円の債券を購入していた人には、30万円しか返済されないかもしれません。この場合、元本100万円に対して実際に返済された割合、つまり

30万円 / 100万円 = 30%

のことを弁済率(回収率)と呼んでいます。


さて、話がそれてしまったように思われるかもしれませんが、ここで話をCDSに移します。前回、CDSの契約とは次のようなものであると書きました。


2006年9月20日から2011年9月20日の間(5年間)に、リーマンブラザーズホールディングスが倒産したら、SさんはBさんに10億円(想定元本)×(1-回収率)を払うこととする。ただし、BさんはSさんに毎年保険料として、400万円の支払いをするものとする。また、倒産が起きた場合には、その後の保険料の支払いは発生しないものとする。


この時、Bさんの立場はどのような人が考えられるでしょうか。純粋ゼロの状態から、新規にトレーディング目的でリーマンのCDSを購入したい、という人もいると思いますが、一つ考えられるのは、すでにリーマンに10億円を融資している銀行や、リーマンが発行した債券を10億円保有している人(債権者)です。

10億円の債権を持っている人たち(CDSの買い手なので、Bさん、と呼んでおきます)は、もしリーマンが倒産してしまうと、その10億円の債権が回収不能になってしまうかもしれません。そこで、この10億円を守るために、年間400万円(この数字はあくまで例です)という保険料を払ってもいいと考えるかもしれません。

前回、CDSには、現物決済と現金決済があると書きましたが、ここでは現物決済を考えます。Bさんが現物決済のCDSを購入して、その後、クレジットイベントが発生した場合、どうなるでしょうか。

この場合、現物決済ですので、

Sさんは、Bさんに10億円を支払い、

Bさんは、Sさんに元本が10億円の債権(債券もしくはローン)を引き渡す

ということが行われます(Sさんは、CDSの売り手です)。

そして、クレジットイベントが発生しているのですから、この10億円の債権は清算されることになります(以前も書いたように、クレジットイベント=バンクラプシーというわけではないので、このあたりは微妙ですが、、、)。

すると、このエントリの最初に説明したように、10億円の元本は返済されることは稀で、100%よりかなり低い回収率相当分が返済されることになります。つまり、「10億円×回収率」というわけです。

あらためて、上の現物決済を数式っぽく書いてみると、

10億円の現金 - (クレジットイベントが発生した企業に対する)元本が10億円の債権

=10億円 - 10億円×回収率

=10億円×(1-回収率)

となり、最初に書いたCDS契約の説明の中に出てきた数式になりました。このような背景があって、数式の中に回収率という言葉が出てきます。


ここで少し話が変わりますが、一般的に、倒産することが明らかになった後、債券の市場価格は急落すると思われます。で、どのあたりに落ち着くかというと、市場が予想する回収率に落ち着くと思われます。つまり、市場参加者がその倒産した企業のバランスシートを分析して、この債券に対してどの程度現金が返ってくるかを予想しながら、市場価格の方が安いと思えば買うでしょうし、高いと思えば売るでしょう。そのような形で市場では取引が行われます。

一方で、実際にその企業の清算が完全に完了して、実際に回収率相当の現金が返済されるまでにはかなり時間がかかるのが一般的だと思われます。そこで、CDSの現物決済用には、オークションという形で回収率を(ある意味勝手に)決定し、すべてのCDS契約の決済を行ってしまっていることになります。

最近行われたオークションで決定された回収率は以下の通りです(Wikipediaより引用)。

2008-10-02 Tembec Inc                83

2008-10-06 Fannie Mae - Senior          91.51

2008-10-06 Fannie Mae - Subordinated     99.9

2008-10-06 Freddie Mac - Senior          94

2008-10-06 Freddie Mac - Subordinated     98

2008-10-10 Lehman Brothers            8.625

http://en.wikipedia.org/wiki/Credit_default_swap


これで、回収率の意味が少しでもお分かり頂ければよいのですが。


クレデリについての本を読むならこちらがおすすめです。

クレジット・デリバティブのすべて 第2版
河合 祐子
4881777424


CDSの回収率でした。

思ったより長くなってしまいました。

リーマン・ブラザーズを参照するCDSの回収率(Recovery Rate)が確定したようです。8.625(=100-91.375)と、直近のマーケット12~13よりは少し低めだったようですが、それほど大きなずれはなかったようです(数字のソースは以下で引用しているニュース記事です)。

CDSの仕組みについては、簡潔にクレジットデフォルトスワップ(CDS)とは?というエントリに書きましたが、質問を頂いたこともあり、取引残高および決済方法についても、もう少し触れておきたいと思います。


まずCDSの取引残高ですが、参照債務(参照組織の債券やローンなど)の実際の残高とは直接的には関係はありません。CDS契約は、その取引当事者が相対で取引をしているだけですので、理論的にはいくらでも残高が積みあがることになります。以下、具体例で考えてみたいと思います。

Aさん(Buyer)とBさん(Seller)の間で、リーマンブラザーズを参照する額面が10億円のCDS契約を結んだとしましょう。さらに、同日、Bさん(Buyer)とCさん(Seller)が同じ満期日を持つ10億円のCDS契約を結んだとします。

この場合、Bさんは売り手と買い手の両方の立場で同じ参照組織の同じ満期日を持つCDS契約を持っていることになるので、ネットの契約残高はゼロとなります(カウンターパーティーリスクはあるものの、マーケットリスクは取っていない状態です)。実質的にはAさんとCさんの間で10億円のCDS契約が残っている状態になるわけですが、統計的にはAさんとBさんの契約、BさんとCさんの契約がそれぞれ別契約としてカウントされるため、CDSの契約残高としては20億円となります。

つまり、CDSの契約残高は、売り買いのポジションをすべてネッティング(相殺)するとかなり小さくなると思われます。

次に、今回リーマンのCDSに関する入札が行われ、回収率が8.625になった、というニュースについてです。まずはニュースをご覧ください。

リーマンCDSの売り手、10日の入札結果で90%程度の損失被る可能性

2008年 10月 10日 11:18 JST

 [ニューヨーク 9日 ロイター] 破綻したリーマン・ブラザーズ(LEHMQ.PK: 株価, 企業情報, レポート)のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の売り手となっていた金融機関やヘッジファンドは、10日に入札結果が明らかになりCDS価値が判明すると、最大で90%の損失を被る可能性がある。

 一部アナリストは、入札でCDSの売り手が買い手を上回った場合が、一段の損失となる可能性もあると予想している。

 マーケットアクセスによると、リーマン債の多くは、額面1ドルあたり0.12―0.13ドル近辺で取引されており、CDSもこの水準までのリカバリーとなることを示している。


原文参照番号[nN09325896](3000Xtraをご利用の場合、配信後24時間以上経過した記事でも380日以内であれば[ID:nN09325896]ご覧になれます。なお、契約の内容によっては、原文がご覧いただけない場合もあります)

© Thomson Reuters 2008 All rights reserved.

http://jp.reuters.com/article/fundsNews/idJPnTK828580120081010


リーマン対象金融派生商品「清算価値は8・625%」

 【ニューヨーク=池松洋】経営破綻(はたん)した米証券大手リーマン・ブラザーズを対象にした、金融派生商品(デリバティブ)のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の清算価値が10日、元本の8・625%に決まった。

 金融派生商品を扱う事業者の業界団体「国際スワップ・デリバティブス協会」(ISDA)が発表したもので、破綻後に暴落したリーマンの社債の価値などに連動する形で決まったという。

 市場推計ではリーマン関連のCDSの契約残高(想定元本)は約4000億ドル(40兆円)。この9割以上が損失となり、リーマンの社債保有者などからCDSを引き受けた金融機関などがかぶることになる。ただ、契約時の手数料などで損失の一部はカバーされる可能性がある。

 CDSは、企業に融資をした金融機関や、企業が発行した社債を購入した投資家が、焦げ付いた場合の損失を肩代わりしてもらうために、他の金融機関などと行う金融取引だ。

(2008年10月12日01時32分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20081012-OYT1T00082.htm


UPDATE 3-Lehman CDS sellers lose $365 bln after auction

Sat Oct 11, 2008 2:13am IST

(Updates price, rewrites throughout)

NEW YORK, Oct 10 (Reuters) - Banks, hedge funds and other sellers of protection on Lehman Brothers LEH.N (LEHMQ.PK: Quote, Profile, Research) are facing losses of 91.375 percent of the insurance they sold, after an auction was held on Friday to determine the value of the credit default swaps.

The settlement of Lehman's credit default swaps is one of the largest in the $55 trillion market to date, with around $400 billion in contract volumes estimated on Lehman's debt.

Based on those estimates, the amount of insurance paid out would equal $365.5 billion, CreditSights analyst Brian Yelvington said in a report. However, "net positions are likely to be much lower," he said.

The auction was widely watched as some investors had feared that large losses by protection sellers may be concentrated at one institution, such as a bank.

Derivatives practitioners, however, argue this is unlikely as protection sellers will have already written down the loss in the market value of the contracts, and so extra losses should be negligible.

The auction, "in and of itself, should not be the downfall of an entity since (Lehman's) bonds have been trading in the low teens for weeks and the difference in the auction and yesterday's price is only $4.375," Yelvington said.

Large counterparties, such as dealers, would also have a number of offsetting trades where they may have bought and sold protection, and much of this will be canceled out.

Bob Pickel, chief executive at the International Swaps and Derivatives Association, a trade group, said payouts after netting these exposures would likely be nearer 2 percent of the volumes outstanding. This means $8 billion in protection would need to be paid out.

LOWER RECOVERY

There were more sellers than buyers of the debt in the auction, which led the final recovery of 8.625 percent to below the 12-to-13-cent area some had expected based on the trading level of Lehman's bonds on Thursday.

This is likely due to more protection sellers choosing to settle the contracts in the auction, compared with protection buyers who settled by physically delivering the defaulted debt to the seller.

When a borrower defaults on their debt, sellers of protection pay buyers the full sum insured, and in return receive the defaulted debt or a cash payment, which is determined by the auction.

In spite of the imbalance "the auction went very smoothly, with the slightly lower-than-expected final price reflecting a bias towards sellers," said Simon Moore, credit strategist at credit Suisse in New York.

"You don't know who's going to cash settle or physically settle until the auction and even amongst the people who physically settle you don't know what the ratio will be," he added. (Reporting by Karen Brettell; Editing by Jonathan Oatis)


© Thomson Reuters 2008 All rights reserved

http://in.reuters.com/article/rbssFinancialServicesAndRealEstateNews/idINN1038718020081010?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0&sp=true

上で説明したように、CDSの契約残高は、参照債務(Reference Obligation(s))(および引渡可能債務(Deliverable Obligation))の残高を大きく上回ることがあります。

ここでCDSの決済方法を簡単に説明します。CDSの決済方法(つまり、クレジットイベントが発生した場合の保険金の支払いのことです)には、大きく分けると

  1. 現物決済(Physical Settlement)
  2. 現金決済(Cash Settlement)

の2パターンに分けられます。さらに、現金決済は次の2パターンに分けられます。

  • 市場価格参照型
  • 定額型

この2パターンで多少の違いはあるものの、現金決済の場合は現金のやりとりだけで済むことになります。

一方、やっかいなのが現物決済の方です。現物決済というのは、現物つまり引渡可能債務(Deliverable Obligation)を受け渡す必要が発生します。ところが、プロテクション(CDS)の売り手は必ずしも引渡可能債務の保有者(または債権者)であるとは限りませんので、引き渡すためにその債務を市場から調達してくる必要があります。歴史的には、この調達需要により、引渡可能債務の市場価格が急騰したりすることもあったようです(例えば、Delphiの例)。

そこで、このような事態を避けるために、現在主流となりつつあるのがプロトコル方式と呼ばれるもので、既存のCDS契約で現物決済と定めていても、入札(Auction)によって最終価格(または回収率)を決定し、現金決済を行いましょう、というものです(ただし、現物決済希望者は現物決済が可能)。


そして、上で引用したニュースは、リーマンを参照するCDSに関して、まさにこの入札が行われて、最終価格(または回収率)が決まりました、といった内容を伝えるニュースなのです。

クレジットデフォルトスワップ(CDS)とは?で例に挙げたものを、参照組織をリーマンブラザーズホールディングスに変更し、かつ回収率を反映させたような契約内容にすると以下のようになります(契約期間も変更しています)。


2006年9月20日から2011年9月20日の間(5年間)に、リーマンブラザーズホールディングスが倒産したら、SさんはBさんに10億円(想定元本)×(1-回収率)を払うこととする。ただし、BさんはSさんに毎年保険料として、400万円の支払いをするものとする。また、倒産が起きた場合には、その後の保険料の支払いは発生しないものとする。


実際のCDS契約はまさにこのようなものです。上のニュースによると、回収率は8.625ですので、SさんはBさんに

10億円×(1-0.08625)=9.1375億円

つまり、9億1375万円の支払いをしてCDS契約が終了となるわけです。一方、この決済の時点まで、SさんはBさんから毎年400万円、この場合は契約から約2年経過していますから合計で800万円の保険料を受け取っていることになります。

Bさんから見ると、800万円の保険料を支払うことによって、約9億円の支払いを受けたことになります。これがCDS契約の実際です。


今回の内容は専門用語も少し含まれていて、わかりにくい内容となってしまったかもしれませんが、すべてをきちんと理解するのはかなり難しいと思いますので気にされる必要はありません。ぼくもまだわかっていませんし、、、


少しでも参考になればと思います。

前回も挙げましたが、以下の本がとても詳しく書かれています(一般の方向けというわけではありませんが)。

クレジット・デリバティブのすべて 第2版
河合 祐子
4881777424

長いですが、最後にもう一つ記事を引用しておきます。

There are often more CDS contracts than actual bonds to which they're linked. That means when a big default happens, an auction is held to work out the value at which traders can settle the contracts in cash.

CDSの残高は、参照債務(債券)の実際の残高よりも大きくなること、そして、

Roughly $400 billion will be paid out on Lehman CDS, but, once all positive and negative positions are "netted" out, about 2% of that money will actually change hands, Pickel estimated. Payments are due on Oct. 21 to settle Lehman CDS in cash, he said.

買いと売りを相殺した後では、実際の決済額はかなり小さくなること、が明確に書かれています。


Lehman derivatives auction described as 'smooth'
Value of Lehman bonds set at 8.625 cents on dollar; contracts to settle Oct. 21

SAN FRANCISCO (MarketWatch) -- An auction to work out the value of Lehman Brothers bonds for the huge credit derivatives market went smoothly Friday, according to the International Swaps and Derivatives Association, which helps oversee the market.

The auction set the value of the debt of the bankrupt brokerage firm at 8.625 cents on the dollar, said Markit and Creditex, the administrators of the auction.

Earlier action in the auction suggested Lehman (LEHMQ 0.10, 0.00, -2.0%) bonds might be worth almost 10 cents on the dollar. The final result means sellers of protection in the credit-default-swap market may have to pay out more than expected to settle the contracts.

Credit-default swaps are a common type of derivative contract that pay out in the event of default. The market has grown quickly, with the notional amount of contracts outstanding surging past $50 trillion in recent years.

The collapse of Lehman, the largest bankruptcy in U.S. history, along with the failures of Fannie Mae, Freddie Mac and Washington Mutual, have sparked concern that the CDS market could crack under the weight of so many contracts settling in such a short time.
There are often more CDS contracts than actual bonds to which they're linked. That means when a big default happens, an auction is held to work out the value at which traders can settle the contracts in cash.

Similar auctions earlier this week to set the price of Fannie and Freddie debt were "messy," undermining confidence in the process, according to CreditSights, an independent fixed-income research firm.

However, the Lehman auction Friday went "smoothly" and "efficiently," according to Robert Pickel, chief executive of the ISDA, which represents major dealers in the CDS market.

Traders and other CDS market participants marked the fair value of their exposures and posted more collateral as Lehman's troubles increased, Pickel explained. This discipline means that sellers of protection should not have trouble paying to settle the contracts related to Lehman, he added.

The result of the Lehman auction means sellers of CDS protection on the firm will need to pay 91.375 cents on the dollar to their counterparties.

Roughly $400 billion will be paid out on Lehman CDS, but, once all positive and negative positions are "netted" out, about 2% of that money will actually change hands, Pickel estimated. Payments are due on Oct. 21 to settle Lehman CDS in cash, he said.

In a Pickel

ISDA represents major dealers in over-the-counter derivatives markets. Because CDS aren't traded on an exchange and prices and positions aren't published, the market is lucrative for dealers.

But the credit crunch has increased calls for more regulation of CDS, something that may not be in the interests of ISDA members.

On Friday, the ISDA's Pickel said that despite "significant criticism," recently, the CDS market has continued to function and remain liquid, giving investors the chance to express their views, while other markets have tightened up.

But one problem with the CDS auction process, and the market in general, is that it's often unclear how many contracts are linked to the debt of specific companies because there's no central repository for such information, CreditSights explained in a note to clients earlier this week.

This lack of information sometimes means that auctions, like the ones for Fannie and Freddie this week, can produce surprising results, the firm added.

Such problems will add to calls for changes to the CDS market. CreditSights reckons a central clearinghouse for trades would reduce counterparty risk and provide transparency.

An official exchange for CDS trades would cut counterparty risk even more because it would take decisions on required margin levels away from the sell side brokerage firms that currently operate in the over-the-counter market, CreditSights said.

Indeed, the New York Federal Reserve met this week with CDS market participants to discuss possible changes.

There will probably always be over-the-counter trading in CDS, like there is in energy markets, CreditSights said.

"If there was ever a time for an exchange product to emerge, however, this is certainly the time," the firm added.

Alistair Barr is a reporter for MarketWatch in San Francisco.

http://www.marketwatch.com/news/story/lehman-derivatives-auction-described-smooth/story.aspx?guid=%7BA5ACF291-FC4D-478D-845D-8713E50448B3%7D&dist=msr_4

このブログでも、不動産デリバティブに関しては以下のようにけっこう取り上げてきましたが、またもや不動産デリバティブネタです。

不動産デリバティブ研究会報告書

最近のエクイティデリバティブと不動産デリバティブ

不動産ヘッジファンドと不動産デリバティブ

日本初の不動産デリバティブ取引が行われたようです

USで不動産デリバティブが始まるようです


9月29日付けで以下のようなプレスリリースが発表されました。

平成19年度不動産デリバティブの可能性とその普及・啓発に関する調査業務報告書の公表について


ということで、国土交通省により、平成19年度の不動産デリバティブに関する報告書が発表されました。以下、そのリンクです。

 不動産デリバティブ報告書(本編)【PDF形式】

 不動産デリバティブ報告書(概要版)【PDF形式】

ちょっと今週の平日はなかなか時間が取れそうにないので、今週末にでもゆっくり読みたいと思います。

日本で不動産デリバティブ市場は発達するのでしょうか。どうなんでしょう、、、

なんか今日はリンクだらけのエントリになってしまいました。

ワシントンミューチャルの破綻、ワコビアがシティに身売りし、イギリスのブラッドフォード・アンド・ビングレーが国有化、三菱UFJがモルスタに21%出資、ベネルクス3国がフォルティスに約1兆7000億円の資本注入、アイスランド第3の銀行がほぼ国有化(75%)などなど、ものすごいことになっています。

必ずしも、CDSのクレジットイベントばかりではありませんが、金融機関のイベント発生相関とでも呼ぶべきものは非常に高いことがわかります(デフォルト相関や、クレジットイベント相関とは書いていません)。

最近のVIX(CBOE SPX Volatility Index)の上がりっぷりがすごいです。

これは一体いつまで続くのでしょうか。

アメリカ発で、今週あたりヨーロッパに移り、来週から再来週あたりにはアジアまで波及してきたりして。となると、極東に位置する日本は最後ですね。

ほんとに歴史的瞬間を日々過ごしている気がします。

つい数日前に、以下のようなクレデリ関連のエントリを書きましたが、ISDAの最新の集計によるとCDSの残高が減少に転じたようです。

クレジットデフォルトスワップ(CDS)とは?
OTC derivatives は Correlation derivatives


日経からの引用は以下の通りです。

信用リスク取引CDS、残高が初の減少 6月末54兆ドル

 企業の倒産による損失を回避するための信用リスク取引であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の残高が急速に減少している。国際スワップ・デリバティブズ協会(ISDA)によると、6月末時点の全世界の取引残高は54兆ドルで2007年末比12%減。01年の調査開始以来初めて減少した。世界的な金融危機の広がりを背景に、売り手となる証券会社などが取引を整理し始めたためだ。

 これまで取引規模を拡大させてきたのは貸し倒れの損失を避けたい金融機関や保証料を得たい証券会社や保険会社など。日本での取引残高も8000億ドルを超えている。(07:00)

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080926AT2C2501I25092008.html


ファイナンシャルタイムズの記事の方がもう少し詳しいので、こちらも引用しておきます。ちなみに、減少したのはクレデリのみで、金利やエクイティは増加しているようです。

CDS decline as sector bids to cut risk

By Paul J Davies

Published: September 25 2008 03:50 | Last updated: September 25 2008 03:50

Credit derivatives markets saw the first ever decline in the volume of outstanding contracts over the first half of the year as the industry pursued aggressively its efforts to tidy up the sector and cut risks.

The notional outstanding volume of credit derivatives was $54,600bn at the end of June, down 12 per cent from the $62,300bn at the end of 2007, according to the latest data from International Swaps and Derivatives Association, the global industry body.

The over-the-counter derivatives industry has been under immense pressure from regulators to clean up its act for the past couple of years. Efforts that began with modernising and speeding up the infrastructure of processing and confirming trades has now moved into pruning the huge volumes of older, outstanding trades.

“The derivatives business overall showed consistent growth over the first half of 2008, but what we are beginning to see in credit derivatives is a downturn in ... the total amount of trades outstanding,” said Robert Pickel, chief executive of ISDA.

“This decrease primarily reflects the industry’s efforts to reduce risk by tearing up economically offsetting transactions, and demonstrates the industry’s ongoing commitment to reduce risk and enhance operational efficiency. We expect to see more effects of this over time.”

Susan Hinko, head of industry relations at TriOptima, which organises cycles of trade compression and termination, said her company had overseen more than $17,400bn worth of credit derivative terminations in the first half of 2008 in the inter-dealer market. The vast majority of these were index contracts rather than single company exposures.

Ms Hinko added that progress had continued until the past couple of weeks.

“The biggest challenge for this process is employment of resources internally at banks,” she said. “We continue to run compression cycles, but back office staff can get redeployed very quickly. The numbers in July, August and September were really good until Lehman happened, since then there have been more pressing priorities at some institutions.”

The remainder of the OTC market saw growth in outstanding volumes continue, with interest rate swaps up 22 per cent at $464,700bn and equity derivatives up 19 per cent to $11,900bn. This puts total outstanding notional volumes at $531,200bn as of June 30 2008.

ISDA said that this figure described market activity rather than market risk. It estimated gross credit exposure before netting at the end of June was $12,700bn and credit exposure after netting was $2,700bn.

Copyright The Financial Times Limited 2008

http://www.ft.com/cms/s/0/49c374c6-8a71-11dd-a76a-0000779fd18c.html


ワシントンミューチャルが破綻し、ワコビアが身売り交渉中などと報道され、先が見えない状況になっていますが、今後どうなっていくのでしょう。

いろいろな意味で激動の時代です。

今日、明日と少し遅めの夏休みを頂いています。ということで、せっかくの平日休みだったので、株式会社ワークスアプリケーションズ第12回定時株主総会に出席してきました。普段はなかなか、株主総会のために有休を取るというわけにもいきません(議決権行使は、いつもは郵送です。しかも、イギリスにいた時は、手元に届いたときにはすでに時遅し、でしたし)。

株主総会に出席したのは人生で2度目です。1度目は確か3年位前にワタミの株主総会に行ってきました。その時は週末だったので、普通に参加できました。

今回は平日開催であること、また株主構成の違いを反映してか、実際に足を運ばれていた株主の方はざっくりで50名程度だったような気がします。ワタミの時は有明かなんかの会場を借りて一大イベントという感じでしたが、今日はワークスの会議室で行われていました。

総会自体は議案採決まで含めて26分ほどで終了し、その後、株主懇談会というか、もう少しざっくばらんに今後の事業計画や株主還元方針の説明、また株主からは様々な質問が出ていました。

で、ぼくもせっかくだったので、2つほど質問してみました。議長である代表取締役最高経営責任者の牧野さんがきちんと答えてくださいました。なかなか企業トップの方に直接質問できる機会はありませんので、貴重な経験だったと思います。

帰りに、ワークスのロゴが入った歯ブラシセットをもらいました。なんで、歯ブラシセットを作ったんでしょうね。

投資一族の長さんから、CDSはCorrelation Derivativesというトラックバックを頂きました。

「Credit業務従事者から猛反発を覚悟の上」とありましたが、猛反発どころか完全に同意します。それどころか、Correlation derivativesはCDSだけではありません。OTC derivativesすべてに言えることでしょう。クレジットのみならず、金利であっても、エクイティでも、FXでも、コモでティでも。


今回のAIGのデリバティブのポジションがどのようなものだったのか詳細は知りませんが、なんかCDS(すでに書いたようにクレジットデリバティブの一種です)だけが悪者にされているような気がしてなりません。

もちろん、今回のAIGの場合はクレデリのポジションが大半を占めていたのかもしれません。しかし、本質的にはOTC derivatives全般のカウンターパーティーリスク(Counterparty risk)に関する問題であって、クレデリだけの話だとは思えないのです。

一般的に、金融機関がデリバティブ取引を行った場合、カウンターパーティーに対するエクスポージャー(信用リスクの額であり、再構築コストを元に計算される)を計算します。具体的には、その計算時点におけるエクスポージャーであるカレントエクスポージャー(Current exposure)と、将来における市場の変動を考慮したポテンシャルエクスポージャー(Potential exposure、もしくはピークエクスポージャー、Peak exposure)なるものを計算して管理しています。

そして、日々これらのエクスポージャーを計測しながら、クレジットラインをモニタリングしているのが一般的でしょう。そして、必要に応じて、CSA(Credit Support Annex)と呼ばれる担保契約をカウンターパーティーと結ぶようにしています。


一般的に、エクスポージャー計算の元になっている原資産価格とカウンターパーティーのクレジットの相関が高い場合、カウンターパーティーリスクは非常に高いと言えるかと思います。

例えば、コモディティ系のデリバティブ契約をその産出国(このコモディティがその国のクレジットに影響を及ぼすほど、その国の経済基盤に密接な関係がある場合)と結ぶ場合、カウンターパーティーの影響は非常に大きなものとなることが予想されます。


さて、やっとクレジットデリバティブの話に戻しますが、例えば、トヨタ自動車のCDSをトヨタ自動車の子会社から買ったところで、そのCDSはほとんど意味がないのではないか、ということになるかと思います(親会社であるトヨタ自動車がデフォルトしているような場合、その子会社であるカウンターパーティーもデフォルトしているでしょうから)。

そして、投資一族の長さんが「米国債のCDSに、USD建は無く、EUR建しかありません。」とおっしゃっていましたが、日本銘柄でも、日本ソブリンと主要銀行銘柄(例えば、東京三菱UFJ銀行など)のCDSは基本的に米ドル建てで取引が行われています。

つまり、日本国や日本の主要銀行のクレジットが急速に悪化する局面では、通貨としての日本円も弱くなっていることが予想されるので、そのようなリスクを回避するために米ドル建てで取引が行われているのでしょう。しかも、もしそのカウンターパーティーが日系金融機関であったりしたら、、、となるかと思います。

以上、長々と述べてきましたが、最近ではOTC derivativesのプライシングにカウンターパーティーとの相関を織り込んだりすることも研究されており、金融機関のカウンターパーティーリスクに対する意識が非常に高くなってきていました。そのような矢先に、今回のリーマン破綻が起きているわけです。

進んでいる金融機関では、CDSを使ってOTC derivativesのカウンターパーティーリスクをダイナミックにマネージしているところもあるかと思います。しかしながら、それが実際にどれほど機能するかは、かなり難しい問題だと思われます。

CDSの場合、たまたま原資産がクレジットというだけであって、クレジットとクレジットの相関を考慮すべきCorrelation derivativesととらえることも至極真っ当な発想ではないかと思います。

今週は、本当に疲れました。2週間ほどロンドンに行ってきて、帰ってから3連休だったので、時差ボケを直しつつ少しゆっくりできたものの、3連休最終日の月曜日にリーマンが破綻。その後は、米国政府によるAIGの救済(ただし、現時点においてはCDSのクレジットイベントには該当しないと理解されている)、BOAによるメリルの買収、ロイズTSBによるHBOSの買収、MSまわりの合併観測、資本参加のウワサ、およびGSを含めた株価下落、CDSのワイドニング、などなどとやたらボラタイルなマーケットでした。

ということで、ほんとにいろいろありましたが、ここ最近は、新聞(例えば、以下の引用など)を読んでいても、いろいろなブログ(こことか、ここなど)なんかを読んでいても、けっこうCDSという言葉を目にするようになりました。

AIG救済要因の信用デリバティブ、国内取引残高3年で10倍超

 茂木敏充金融担当相は19日の参院財政金融委員会で、米保険最大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が公的に救済される要因となった、信用デリバティブの一種であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を巡り、日本国内の取引残高(想定元本ベース)が2007年6月末時点で8128億ドルと、3年前の10倍超に急増したことを明らかにした。

 企業の倒産リスクを「保険料率」の形で売買するCDSの残高は04年6月末で784億ドルだった。世界の取引残高はこの間、8兆4222億ドル(04年末)から62兆1732億ドル(07年末)に増加したとも説明した。(07:00)

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080920AT2C1901H19092008.html


4月に留学から帰国して以降、クレジットデリバティブ関連の仕事をするようになったので、まだ初心者(業務経験半年弱です!)ではありますが、自分の理解の確認のためにも、クレジットデフォルトスワップについて簡単に説明してみたいと思います(以前、バリアンススワップについて書きましたが、クレジットデフォルトスワップの方がより親しみやすいデリバティブなのではないかと思います)。

ということで、始めます。以下では、クレジットデフォルトスワップ(Credit Default Swap)を簡単に、CDSと書きます。


CDSを一言で説明すると、

契約時に特定したある参照組織(一般的には、企業)の倒産に対する保険契約

と言えるかと思います。

つまり、ある参照組織(例えば、トヨタ自動車)が倒産すると困る人がいる場合に、その倒産リスクを回避(ヘッジ)したい場合に、保険契約を結びたいと考えるかもしれません。その保険契約とは、例えば次のようなものです。

保険契約を買いたい人をB(Buyer)さん、保険契約を売りたい人をS(Seller)さんとします。

2008年9月20日から2013年9月20日の間(5年間)に、トヨタ自動車株式会社が倒産したら、SさんはBさんに1億円(想定元本)を払うこととする。ただし、BさんはSさんに毎年保険料として、30万円の支払いをするものとする。また、倒産が起きた場合には、その後の保険料の支払いは発生しないものとする。

これがCDS契約の中身です。それほど難しい話ではないと思いますが、いかがでしょうか。

2008年9月20日に契約が始まって、1年間トヨタ自動車が倒産しなければ、BさんはSさんに30万円支払います。

その後、2009年9月20日までの1年間で、トヨタ自動車が倒産しなければ、BさんはSさんにさらに30万円支払います。

ところが、2009年9月21日にトヨタ自動車が倒産したとしましょう(クレジットイベントの発生)。SさんはBさんに保険金額(想定元本)である1億円を支払って、このCDS契約は終了となります。

一方、もし契約満期である2013年9月20日までトヨタ自動車が倒産しなかったら、BさんはSさんに合計30万円×5=150万円だけ支払い、SさんはBさんに何の支払いをすることもなく契約終了となります。


上記の例では実際の取引慣行とは若干異なる形で簡単化して書きましたが、基本的な考え方を理解するだけであればこれで問題ないと思います。

実際の取引慣行と具体的に異なる点としては、いくつかありますが、例えば、上では倒産と書きましたが、通常は「倒産が起きた場合」のみではなく、「クレジットイベントが発生した場合」とより一般的な形で定義され、企業を参照組織とするCDS契約の場合、

  1. バンクラプシー(Bankruptcy、ISDA邦訳では破産)
  2. 支払不履行(Failure to Pay)
  3. リストラクチャリング(Restructuring)

の3つをクレジットイベントとみなす3CE(CE: Credit Event)での契約が一般的となっています(それぞれの詳細は割愛させて頂きます)。

また、上ではクレジットイベントが発生した場合に1億円支払われると書きましたが、実際にはあらかじめ定めた引渡可能債務をBさんはSさんに引き渡すことになっています(現物決済)。

さらに細かいことですが、保険料の支払いは年1回払いではなく、年4回払いです。


債券投資に詳しい方にとっては、企業の、国債に対する上乗せ金利分のみをスワップという形で取引するもの(とほぼ同等)、と言えばわかりやすいかもしれません。


ちなみに、このCDSですが、ISDA(the International Swaps and Derivatives Association, Inc.)の統計によると、急速に取引残高が増大しています。参考までに2003年と2007年の数字を比較すると、約3.78兆ドルから2007年には約62.2兆ドルまで増大しています(以下のISDAの数字では、trillionが抜けているように見えます。またこの数字は上の日経の記事にある数字と同じでしょう)。

2007 YEAR-END MARKET SURVEY

Notional amounts of interest rate derivatives outstanding grew almost 10 percent to $382.3 trillion in the second half of 2007. For the year as a whole, interest rate derivatives notionals rose 34 percent.

The notional amount outstanding of credit default swaps (CDS) grew 37 percent to $62.2 in the second half of 2007. CDS notional growth was 81 percent for all of 2007.

Notional amounts of equity derivatives remained flat at approximately $10 trillion during the second half of 2007. The annual growth rate for all of 2007 was 39 percent.

In this survey, 91 firms provided data on interest rate swaps, 81 provided responses on credit derivatives, and 83 provided responses on equity derivatives. All major dealers responded.


2003 YEAR-END MARKET SURVEY

The