2-1 MBA & ビジネス: 2011年7月アーカイブ


以前から読もうとは思っていたのですが、読めていなかった渋沢栄一の「論語と算盤」で、「超訳」という形で読みやすいバージョンが出ていたので早速読んでみました。


正しい道徳を完全なものとしながらの経済活動そしてビジネス活動でなければ、国の繁栄は成り立たない。

国の富や繁栄というものは、仁義道徳、正しい道理に根源がなければ、決して永く続くものではないのだ。(P.15)

ビジネスをやるにあたっては、やはりこういった志がなければ永くは続かないのだと思います。


常にまわりに敵やライバルがあって苦しめられ、その敵やライバルに必ず勝ってみせるぞという気がなくては、人は決して上達、進歩するものではないのだ。(P.41)

人間はやはり競争環境におかれてこそ上達、進歩するものなんだと思います。健全で適度な競争環境に身を置くことが自分を成長させる上でも重要なのだと思いました。


では常識とは何か。
私は次のように考える。

それは、何をするに当たっても極端に走らず、がんこにならず、是非善悪をきちんと見分け、利害得失をよく考え、言葉や行動もすべて中庸を心がけていくことだる。(P.92)

こういった常識を備えられるようになりたいものです。


ビジネスの本質つまり本当の利益の追求というのは仁義道徳にもとづかなければ、決して永続するものではない、とわたしは考えるのである。(P.111)

金儲けはけしからん、なんてことは一言も言われていません。ただ、金儲けが私利私欲に基づくものなのか、仁義道徳に基づくものなのか、そこが最も大切なポイントなのです。


たとえば孔子の「仁の実践にあたっては師に譲らなくてよい」という教えである。

道理の正しいところに向かっていくには、あくまで自己の主張を通してよいというのである。師は尊敬すべき人であるが、仁の実践においてはその師にすら譲らなくてよい(後略)(P.158)

仁のためなら、師に対しても譲る必要はないと。こういった価値観をきっちりと持った上で、日頃からそういった価値観を拠り所として行動していきたいものです。


どんな職業であろうと、どんな立場にあろうと、いつも自分自身の力でもって進み、正しい道に少しも反しない生き方をし、そして財を築き、繁栄をもたらしていくようにしなければならないのだ。(P.176)

まさに職業に貴賎なし、というところでしょうか。


もっと論語を深く勉強していかなければ、と思う1冊でした。


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戦略と実行―組織的コミュニケーションとは何か
戦略と実行―組織的コミュニケーションとは何か清水 勝彦

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戦略と実行
 組織的コミュニケーションとは何か

内容紹介

マイケル・ポーター『競争の戦略』が刊行されたのは30年以上も昔のことだ。いまや企業にとって戦略は必要不可欠なものとなった。戦略を持たない企業はないといえる。ところが、一時ブームとなった「ブルーオーシャン戦略」は、他社との差別化の道は容易には見つからないという厳しい現実を前に、あっという間に廃れてしまった。どの企業も同じような戦略を立て、差別化が困難という状況が続いている。
 どの企業も頭のいい人が集まって立派な「成長戦略」を掲げているのに勝者、敗者に分かれるのは、戦略の本質を理解した「実行」が決め手になっているから。企業の業績は戦略と実行の掛け算であり、戦略立案=トップの役割、実行=現場の役割といった二分法ではうまくいかない。戦略とは分析、ロジックであり、実行は組織における人間の気持ち、やる気である。本書は、戦略実行における問題点、失敗事例を挙げながら、実行の要となる「組織におけるコミュニケーション」を深堀りする。

目 次

戦略と実行

はじめに

第一部 戦略実行の「今」

第1章 戦略実行の原点

 1・ロジック経営の陥穽
 2・経営の気持ち
 3・実行とコミュニケーション
 
第二部 戦略実行の問題点

第2章 戦略と実行

 1・戦略のコモデティ化
 2・コンサルティング会社に見る「実行」の変遷
 3・「戦略」と「実行」への誤解
 4・「実行」の本質

 ■戦略実行の事例1
   ヒューレット・パッカードの失敗

第3章 戦略実行の失敗分析

 1・戦略実行の失敗要因
    a.トップの鶴の一声とあれもこれも
b.時間・準備不足
    c.戦略が不明確
d.実行と評価制度がリンクしていない
e.責任が不明確
f.部門間の対立
g.納得度が低い
h.片手間の実行
i.情熱・本気度の不足
 2・戦略実行の失敗分析の前提
    a.トップの鶴の一声
b.時間・準備不足
c.戦略が不明確
d.実行と評価制度がリンクしていない
e.責任が不明確
f.部門間の対立
g.納得性が低い
h.片手間の実行
i.情熱・本気度の不足
3・戦略実行失敗の構造的問題

第三部 組織におけるコミュニケーション

第4章 コミュニケーション

 1・素振りとゲーム
 2・コミュニケーションとは何か
 3・組織におけるコミュニケーション
 4・コミュニケーションは「聞く」ことから始まる
 5・コミュニケーションと感情
 
第5章 コミュニケーションと戦略実行

 1・戦略実行とコミュニケーション
 2・階層とコミュニケーション
 
第6章 コミュニケーションの論点

 1・コミュニケーションの成果よ効率
 2・地獄と天国のコミュニケーション
 3・PDCAが回らないわけ

第7章 戦略の共有化・コミュニケーションに関する研究の示唆

 1・会議の目的と現実
 2・知識(抽象)と現場(具象)
 3・戦略の共有と業績
 4・部下との認識の共有と業績

 ■戦略実行の事例2
   サターンの失敗

第四部 組織の実行力向上に向けて

第8章 組織の実行力を測る10の質問

 1・あなたは、相手が話を聞かないのは自分の責任だと思っているか?
 2・あなたは、会社のビジョンを「絵」に描けるか?
 3・あなたは、Planにどれだけ資源をかけているか知っているか?
 4・あなたは、Checkをした「つもり」になっていないか?
 5・あなたは、制度を作って「できた」と思っていないか?
 6・「成功」と「失敗」の二元法で様々なことが語られていないか?
 7・あなたは、「和気あいあい」が「コミュニケーションがよい」ことであると思っていないか?
 8・「根負け」したり、させられた経験を、社員が持っているか?
 9・あなたは、現場での「発見」を奨励しているか?
 10・あなたは、「コミュニケーション」に効率性ばかり求めていないか?
 
第9章 まとめ:今の日本の経営の問題

 1・戦略のコモディティ化再考
 2・まとめ


あとがき
「戦略実行」の参考書

http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/P48450.html


この本を読んで、戦略は実行されて初めて意味があるんだと強く思いました。頭でっかちな戦略だけを立案しても、実行され、結果につながらなければ意味がないんだと思います。

シティグループの次期CEOとみなされながら、サンディ・ワイルに解雇され(1998年)、その後に職を得たバンクワンがJPモルガン・チェースに買収されると同時にCEOとしてウォールストリートに返り咲き、そればかりか金融危機を乗り切ってシティバンクにはるかに差をつけているジェームズ・デイモンは、「ありきたりの戦略をきっちり実行するほうが、すばらしい戦略を立てて実行につまずくよりもはるかに意味がある」と断言しています(フォーチュン2002年7月22日号)。(P.4)

これは確かにその通りな気がします。実態としては、きっちり実行できていない企業がほとんどなのではないかと思います。


日産自動車のゴーンCEOは「社員には自分たちがどこに行こうとしているのか絶えず知らせる必要があります。戦略と目標を明示されることによって社員たちは鼓舞されるのです」と指摘します。つまり目標や戦略がきちんと共有されていれば、それは実行につながるということです。(P.23)

戦略を作ったとしても、それがトップの自己満足で終わってしまっては、実行にはつながらないのでしょう。戦略が全従業員に共有され、それが表面的ではなく、腹に落ちて初めて共有できたと言えるのではないかと思います。


ヘンリー・ミンツバーグはその著書『Managers, not MBAs』(2004年、邦訳は『MBAが会社を滅ぼす』日経BP社)で、経営者に必要な三つの要素を挙げています。

1.分析を中心とした科学的要素
2.経験を中心とした職人的要素
3.ビジョンの創造というアートの要素

そして、これまでの経営の見方、その結果としてMBA教育は第一の「分析」を中心とした科学的要素に偏りすぎていると指摘します。よくトップの役割と指摘されるビジョンだけでなく、経験から学ぶ職人的な要素が必要だとするところに、ミンツバーグの真骨頂があります。過去のデータの分析と将来のビジョンは、戦略の実行を通じて得られる経験と学習があって初めて結びつき、結果が出るのです。(P.51-52)

この3つの要素を兼ね備えた経営者というのはどれほどいるものなのでしょうか。


「伝える」から「共有」へ

Said ne Heard
(こっちが言ったからといって、聞いてもらえたわけではない)

Heard ne Listened
(「聞いて」もらえたからといって、「聴いて」もらえたわけではない)

Listened ne Understood
(聴いてもらえたからといって、理解してもらえたわけではない)

Understood ne Agreed
(理解してもらえたからといって、賛成してもらえたわけではない)

Agreed ne Convinced
(賛成してもらえたからといって、腑に落ちて納得して行動しようと思ってもらえたわけではない)

(P.157)

他人に納得させるのがいかに難しいかをきちんと理解した上で行動する必要がありますね。


まさに、「まず相手を理解することに努めなさい。その上で、自分を理解してもらおうとしなさい」(Seek first to understand, then to be understood)(P.163)が重要なんだと思います。


「コミュニケーションとは意味を共有化することである」という定義には二つの意味を含んでいます。一つは、「内容について共有すること」、(中略)もう一つは「何が共有できており、何が共有できていないか」を共有化することです。(P.178-179)

この2点目に関してはほんとに重要だなと思います。何が共有できていて、何が共有できていないかを明確にしないまま、いろいろと議論していても、あまり意味のある議論はできないのではないかとよく思います。


戦略の実行、そしてそのためのコミュニケーションという視点から言えば「トップが現場を知る」とはいくつかのレベルがあります。(中略)
1.現場の市場・競合情報を知る
2.現場に、トップの指示が届いているかどうかを知る
(中略)
3.現場の人間がどのような気持ちかを知る
4.現場の人間が、自分の気持ちをわかっているかどうかを知る

(P.191-192)

特にこの後半2つの点こそがコミュニケーションなのではないかと思います。そういった気持ちを共有できていれば、強い組織になるのではないでしょうか。


「仲が悪いからコミュニケーションがない」のではなく、「コミュニケーションがないから仲が悪くなる」(P.202)

確かにそうかもしれません。


CDIで私と一緒に働き、その後、産業再生機構を経て経営共創基盤でマネージング・ダイレクターをしている田中正範氏が私のクラスに来てくれたときに大変奥の深い指摘をしてくれました。

社長が、明日これをやるといってやらなかったら、みんなにうそつきといわれる。しかし、一年後にこれをやるといって出来なくても、みんな何も言わない。(P.231-232)

時間の効果は非常に大きいわけですね。


どんなにすばらしいアイデア、戦略を作っても、その実行に同じかそれ以上の労力を持って取り組むことがなければ、本当の果実は得られません。「仮説」と知りながら全力で取り組む、その二律背反した命題に取り組める力こそが組織の実行力なのだと思います。(P.275-276)

結局はいかに実行できるか、それにつきる感じでしょうか。

ということで、清水勝彦さんの戦略に関する3部作の完結編でした。他の2冊は以下のものです。どれも平易な言葉で書かれているので読みやすい本でした。


戦略の原点
戦略の原点清水 勝彦

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経営意思決定の原点
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経営意思決定の原点

内容紹介

『戦略の原点』に続くテキサス大学流MBAシリーズの第二弾。前著と同様、MBAレベル、つまりやさしい解説でケーススタディをたっぶり紹介しながら、組織の戦略的意思決定についての勘所をコンパクトに解説する。

本書のハイライトは、意思決定にみられる「病」の分析。
(1)決められない(優柔不断)、
(2)決め急ぎ(拙速による失敗)、
(3)決めただけ(決定しても実行されない)、
(4)決めっぱなし(意思決定の見直しがなされない)、
(5)決めすぎ(実行途中で次々と変更される)
を取り上げ、それぞれの「病」の背景を詳しく解説する。

さらに、意思決定の理論的枠組みと組織の意思決定力を高めるための方法についても詳しく説明されている。
世界的にデフレからインフレへと大きく潮流が動くなか、経営意思決定を再考するのにふさわしい1冊。


目次

はじめに

第一部:経営意思決定の基本要素
個人と経営意思決定
(1)良い意思決定
(2)心理的な意思決定の落とし穴
 1.「Seeing is believing」は本当か?:選択的認識
 2.態度が変わるから行動が変わるのか?:認識の不整合の解消
 3.「そうなると思っていたよ」?:記憶とヒンドサイトバイアス
 4.基準が違えば答えも違う?:アンカーリングと目立つ情報の効果
 5.成功は自分の貢献、失敗は環境のせい:因果関係の根本的なエラー
 6.半数はトップ一〇%?:自信過剰
 7.これだけの証拠があるから間違いないはずだ?:正当化バイアス

グループと経営意思決定
(1)三人寄れば文殊の知恵?
(2)グループシンク
(3)グループの圧力と少数派の役割

組織と経営意思決定
(1)限られた資源のトレードオフ
(2)競合の反撃
(3)意思決定は出発点

ミニケース1:アサヒビール:スーパードライのあと


第二部:組織の経営意思決定に見られる病状
決められない:優柔不断
(1)「決めるべきなのに決めないのか」「決めるべきでないから決めないのか」
(2)決められない理由
 1.「何もしないこと」が心地よい
 2.確信の持てる選択肢がない
 3.どうせできない
(3)「決められない」ことの副作用

決め急ぎ:拙速
(1)「準備」が決定の質を決める
 1.成功体験と心理的なバイアス
 2.早く決めて楽になりたい

決めたはず:決定事項が実行されない
(1)意思決定に従わない組織
 1.決定の目的化
 2.経営と現場との認識ギャップ
 3.忙しい!

決めっ放し:決めたことの評価・見直しの欠如
(1)評価と見切りの大切さと難しさ
(2)「決めたこと」が「自然死」する問題
 1.測らない
 2.現場の状況がトップに伝わっていない

決めすぎ:頻繁な変更による資源の浪費
(1)経営と「朝令暮改」
(2)「朝令暮改」の問題
(3)決めすぎてしまう理由
 1.成功体験
 2.失敗体験

ミニケース2:シアーズとKマート


第三部:組織の経営意思決定力を高める
敏感力
(1)経営意思決定プロセス再考
(2)網を張る

コミュニケーション力
(1)戦略意思決定とコミュニケーション力
(2)リーダーのコミュニケーション力
(3)現場のコミュニケーション力
(4)コミュニケーション力の根底にあるもの

バランス力
(1)コミットメントvs見切り
(2)自信(夢)vs現実(問題)
(3)個人vsグループ(組織)
 
ミニケース3:GAP

あとがき

http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/P46950.html


個人の意思決定だってやさしいものばかりではありませんが、組織の意思決定というのは本当に難しいものなんだと思います。そして、失敗をしてしまうと、これまた取り返すのが難しい事項が多いのではないかと思います。会社の経営って、ほんとに難しいですね。


(前略)成果主義で何でも解決できると安易に判断してしまった会社はしっぺ返しを受けても当然だろうと思います。結局、金銭が動機付けの大きな要因であることは間違いないのですが、金銭的報酬「だけ」にしてしまった瞬間、これまで「会社のため」だったり、「仕事が面白い」と思って働いていた人たちが、「結局、俺たちは金で買われているのか」と考えや態度を改めざるを得なくなるように強いられたのです。(P.27)

金銭的報酬が大きな要因ではあったとしても、それだけにしてしまっては、強い組織を作ることはできないのだと思います。


もちろん、競争相手に比べて業績が良い方がいいに決まっています。しかし、歴史も、文化も、戦略も違うのです。「大手インベストメントバンクだから」「マスコミによく並んで取り上げられるから」だけでライバル視し、自社の戦略や強みを顧みず、闇雲に業績を競ったとすれば、そこに無理があったのもうなずけます。(P.39)

同じ業界に属しているといっても、「歴史も、文化も、戦略も違う」のであれば、業績だって違ってきて当然ですね。


冒頭で挙げたミンツバーグ教授の言葉「Strategy can be described as a pattern in a stream of decisions.」の通り、一つの経営意思決定がなされた後、さまざまな関連する意思決定を積み重ね、競合の動きも踏まえて軌道を修正しながら効果的な実行ができてはじめて投資はリターンとなって戻ってくるのです。(P.88)

戦略は、戦略を決めるだけではなく、その後の外部環境の変化も考慮しながら、きちんと実行して初めて成果につながると。そういう意味では、スタティックなものではなく、非常にダイナミックなものと言えるかもしれません。


本田宗一郎氏を支えた藤沢武夫氏の言葉を借りるまでもなく、経営とはマラソンを何度も何度も走るようなものです。一つのレースでいいスタートを切る(良い決定をする)のと同じか、それ以上に、どのレースを走るか、そして駆け引きを踏まえてどうフィニッシュするかが重要なのです。(P.93)

偉大な経営者は、たとえ話がとてもうまいですね。


トリンプ・インターナショナル・ジャパンの社長を長く勤められた吉越浩一郎氏は、コミュニケーションで最も大切なことは、情報を共有化して「判断のベースとなる『常識』が何なのかを、全員が共通認識として持つ」ことであり、「組織内の常識レベルを高める」ことがリーダーの責任であると指摘されています(『デッドライン仕事術』)。(P.188)

こういった全員が共通認識として持つ、というのはグローバル企業で、経営陣が様々な母国、文化等を持っている場合、さらに難しい気がしますが、一方で、ますます重要になってくるのではないかと思います。



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