繰り上げ返済の考え方: 財務諸表を使って考える

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先日、繰り上げ返済の考え方というエントリを書きましたが、それについていくつか質問を頂きました。特に、「5.73%の投資とみなせる」という考え方については、違和感を覚えられた方が多かったようです。

ということで、改めて繰り上げ返済の考え方を財務諸表を使って考えてみたいと思います。以下では、細かい費用や税金などについては一切無視して考えています。繰り上げ返済という点に絞って考える際には、とりあえず無視しても大きな間違いにはならないと思います(ということで、減価償却も無視しています)。


まず、前提として以下のような不動産投資を考えてみます。具体的な不動産はワンルームでも、2DKでも、戸建てでも何でも構いません。


不動産購入価格:1000万円
不動産実質利回り:10%

ローン:700万円 30年 満期に一括返済
ローン借入金利:3%

自己資金:300万円


実質利回りは管理費用など控除後のFCRだとします(実際、FCRで10%というのはちょっと良すぎる気もしますが、あくまでわかりやすい例ということで)。

また、ここでは簡単のため、ローンの元本返済は満期で一括して行うものとします(つまり、アモチではありません)。


これをバランスシートで表現すると次のようになります。

BS-1.jpg

そして、収支(キャッシュフロー)は次のようになります。

(+)賃料収入:1000万円×10%=100万円

(-)ローン金利:700万円×3%=21万円

(=)ローン返済後収益:100万円-21万円=79万円


すると、1年後のバランスシートは次のようになっています。

BS-2.jpg


自己資金は当初の300万円が379万円に増えているので、リターン(企業経営で言うところのROEに相当)は26.3%となります(ちなみに、ROAは10%です)。これがまさにレバレッジ効果です(何度も強調しますが、実際には税金があるのでもっと低めの数字なります)。

そして、ローンの残高は700万円で変わっていません(満期一括返済型のため)。

また、資産側ですが、ここでは不動産価格は購入時と変わらずと評価しておきます。そして、不動産収入から金利返済分を差し引いた79万円が現金として手元に残ることになります。


この状態が、前回のエントリで書いた初期状態に近いものです。

この現金79万円を何らかの投資に回すべきか、それともローンの繰り上げ返済にまわすべきか、という選択を迫られるわけです。例えば、この79万円で債券投資を行った場合はバランスシートは次のようになります。


BS-3.jpg


この債券の満期が29年で、利回りがローンの借入金利である3%よりも高いのであれば、このような債券投資は合理的な選択肢の一つと言えるかと思います(ただし、29年後の不動産評価を考慮すると、この3%という基準がもっと高くなるのではないかと思います)。

債券はあくまで一例ですが、投資対象は株式でも、投資信託でも、(金利が高いのであれば)預金でも、別の不動産であっても、何でもよいと思います。元本の変動リスクを自己資金で十分吸収できるのであれば、ハイリスクハイリターン商品であっても構わないでしょう。

このような観点で考えると、ローンの繰り上げ返済を議論する際には、繰り上げ原資を使った投資の期待収益率も同時に考えていくべき、という発想になるかと思います。つまり、収入として入ってきた資産側の現金を何らかの投資にまわすべきか、それとも負債側のローンの削減にまわすべきか、選択になるかと思います(サラリーマンとしての給与収入がある場合は、その収入も含めて考えます)。


もちろん企業経営における自社株償却のように、79万円の現金を引き出してしまって、自己資金を減らすということも可能ですが、結局そのお金を使って別の投資なんかを行うのであれば同じバランスシートで行うか、別のバランスシートを用意するかの違いだけですので、結果的には上の投資にまわす場合と実質的には同じになるかと思います。

また、新たに大きな投資を行う場合は、79万円×5年くらいたまるまで待たなければならないかもしれません。そうすると、その5年間は預金や債券などの元本リスクが限りなく低いもので運用しなければなりませんので、その間は低めのリターンで運用しなければなりません。こういったタイミングの観点も考慮するとますます複雑になってしまいます。


さて、上では満期一括返済型のローンを例に考えましたが、現在の日本において個人で不動産投資を行う場合やマイホーム購入時の住宅ローンの場合には、実際には元利均等返済型などのアモチ型(金利支払いだけではなく、元本返済も同時に行っていくタイプ)のローンが一般的だと思います。

そこで条件を次のように変更してみます。

不動産購入価格:1000万円
不動産実質利回り:10%

ローン:700万円 30年 元利均等返済
ローン借入金利:3%

自己資金:300万円

すると、この変更に伴って1年目のキャッシュフローも次のように変更されます。

(+)賃料収入:1000万円×10%=100万円

(-)ローン金利:700万円×3%=21万円

(-)ローン元金返済:15万円

(=)ローン返済後キャッシュフロー:100万円-21万円-15万円=64万円

つまり、ADSが約36万円となっています。


そして、1年後のバランスシートは次のようになっているはずです。

BS-4.jpg


最初の例との違いは、15万円の元本返済が行われているのでローンの残高が685万円になっており、その分資産側では現金が15万円少なく、64万円になっています。

そして、この64万円を何らかの投資にまわすべきか、それとも早期返済にまわすべきか、という議論になるかと思います。

アモチ型でやっかい、というか考えづらいのは、元本返済相当額と金利相当額の和は毎年約36万円と一定なっているのですが、徐々に元本返済相当額の割合が満期に近づくにつれて上昇していくことだと思います。

毎年一定ではない現金が手元に残ることになり、それをどのようなタイミングで、どちら(投資またはローン返済)の選択肢にまわすのが最適か、といったことをまじめに考えるとかなりややこしい気がします(より正確には、アモチ、非アモチにかかわらず、減価償却や、税金も考慮に入れるべきです。また賃料収入の将来予測(空室率や古くなることによる賃料低下)や、バリュー維持または向上のための定期的な追加投資も考慮すべきでしょう)。


ということで、不動産投資は金融商品に投資するようには、リスクリターンがきれいに描けるわけではありませんし、何かイベント(空室、滞納、火災、地震、金利上昇など)が起きればそれに応じて対応が必要になってくるでしょう。面倒くさいと考える方もいるかと思いますが、逆に言えば工夫次第でリターンをかなり改善させることも可能だと言えるのではないでしょうか。


さて、話がすこしそれてしまいましたが、当初の「5.73%の投資とみなせる」というのは、満期に不動産が投資実行時と同じ価格(価値)で戻ってくる場合になるのだと思います。実際には、20年後だったり、30年後だったりの、その時の時価でもどってきますので、一概には言えないのかもしれません。

自分なりに整理して書いてみたつもりですが、このような「繰り上げ返済の考え方」はいかがでしょうか。

わかりづらいですかね、、、






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